ジリジリと照らす太陽。
綺麗に広がる、青い空。
ついこの間までは雨が降り、あまり暑さを感じなくなったから、やっと……って思ったのに。
──……神様のバカッ!
- madly -
「あーつーいー……」
なのはがそう言って、勢い良く机に突っ伏した。
「もう、なのはってば。だらしないよ?」
「だってぇー」
そう注意しても、なのははアヒル口で文句を言ってくる。可愛いなぁ。
今日は、なのはが私の家に遊びに来てて、さっきまで二人で本を読んでたんだけど……なのはが飽きちゃったみたい。
「ねー、フェイトちゃん! クーラーつけようよー!」
なのはがじとーっとした目で抗議してくる。
「今日は風もあるし、窓開けてるだけでも涼しいよ?」
確かに外は陽があって暑い。けれど、室内になると別だった。
窓から入る風が心地良く、私は不快には思っていなかったんだけど……。
「なのは暑いの?」
「あついよー」
なのはは暑いみたい。
「でも、たまには自然の風で涼んだりとか……」
「暑いものは暑いのー!」
私がせっかく自然の良さを話そうとしたら、怒ったなのはに遮られてしまった。
「私はそんなに暑くないんだけどなぁ……?」
仕方なく私が窓を閉めようと、立ち上がって開いている窓の前へ行くとダイレクトに風が当たった。
──……こんなに涼しいのに。
心でそう呟きながら、私は窓を閉めた。
すると同時に、後ろでピッと言う電子音が聞こえた。
きっとなのはがクーラーをつけたんだろう。
──……って、え、すっごい寒いよ!?
クーラーがついたと思えば、室内がすぐに冷えだす。
「なのはっ! 一体何度に……っ」
驚いた私は、なのはの方へ振り向き抗議をあげようとした……が、それはなのはによってまたも遮られた。
「……っは、はぁ、な、のは」
「ふふ、ふぇーいとちゃん」
私の抗議の言葉はなのはの口内へ消え、当の本人はとてもイイ笑顔をしていた。
「な、んの、つもり?」
その笑顔に畏怖の念を覚えた私は、少し警戒をし、後ろへ一歩下がる。
「え? なんのことかな?」
なのははそんな私に気にしず、離れた分だけの距離を縮める。
「こんなに部屋冷やしたり、その……急に、キス、したり……」
少し恥ずかしくなりながらも、逃げることは忘れない。
「あぁ……そのこと? んー、言っても良いけど……」
笑顔を浮かべながら距離を詰めるなのは。……正直、すごく怖い。
「……な、……に?」
とうとう後ろが壁……というか、窓になってしまった。
その瞬間、なのはの目が光った……気がした。
「部屋を冷やしたのも、フェイトちゃんにキスをしたのも、同じ理由なんだよ?」
完全に距離を詰めたなのは。身長差のせいもあって……上目遣いになるなのは。
「……知りたい?」
少し背伸びをするなのは。
でも、上目遣いなのは変わらなくて……なのはの息遣いが感じ取れる。
「う、ん……」
これ以上後ろへ行けないのに、心なしか体を後ろへ預ける私。
すっと、なのはの綺麗な手が、私の頬へ触れる。
「それはね……、フェイトちゃんに触れたかったから、だよ?」
「え……?」
私に触れたなのはの手は、とても冷えていて冷たかった。
「そんなことなら、別に、こんなことしなくても……」
なのはの身体が冷えている、そのことで頭がいっぱいになりながらも、私はなのはとの会話を続ける。
「だって、暑い時にフェイトちゃんに触れちゃうと……大変なんだよ?」
そっと顔を近づけるなのは。私はそんななのはから、目が離せないでいる。
「それに……寒かったら、フェイトちゃんにずっとくっついていられるでしょ……?」
目を閉じ、なのはが私に口付ける。その唇さえも冷たくて、なんだか胸が苦しくなる。
「…………やっと涼しくなってきたと思ったのに、残暑がすごいんだもん」
確かに。以前までの暑さほどでないと言っても、まだまだ暑さは残っている。
でも、だからって……。
「……なのは、冷たいよ……?」
こんなに身体を冷やしてまでしなくても……。
私はそう思うけど、なのははきっと違うんだね。でも、それだけ私に触れたいって思ってくれてるなら……嬉しい、けど恥ずかしいな。
「うん……ねぇ、フェイトちゃん? 暖めてくれる……?」
きゅっと、抱きついてくるなのは。その言葉に、温度に、心が応える。
「……いいよ。責任、取らないとだからね……?」
なのはを抱き寄せ、そう耳元で囁けば、なのはの身体がピクッと反応を示す。
──……可愛い。
その言葉は、なのはの口内へ消えていった。
ねぇ、なのは。
きっと、私たちの毎日は、いつだって暑いんだろうね?
- Fin -